初心者のためのコンタクトガイド
行動しながら、脳では別のことを考える眼と脳と身体のコーディネーションを高める具体的な方法を紹介しましょう。
これは、スポーツ選手に限らず、誰にでも効果のあるトレーニングです。たとえば、子どもたちに「勉強しなさい!」と怒鳴ったり、「とにかく机に向かいなさい」と強制するより、これらのトレーニングで基礎となる能力を開発しておいたほうが、よほど将来の成長の糧になるかもしれません。
知識ではなく、自分自身の核になる軸の部分で確かな力となるだろうからです。家の中でもできるトレーニングです。
ピンポン球、ゴルフボール、テニスボール、野球のボールなど、何かボールを1つ用意してください。誰かと向かい合って立ちます。
その間隔は1メートル程度で結構です。相手に、簡単な99の問題を出してもらうと同時に、ボールを軽く投げ上げてもらいます。
あなたは、その答えが偶数なら右手、奇数なら左手でキャッチします。計算自体は簡単ですが、それを偶数か奇数か判断し、しかもそれを行動に結びつけるのは意外に混乱します。
もし、いとも簡単にできたら、少し変化を加えて難しくしましょう。たとえば、広い場所なら投げ上げるボールを左右に散らして身体の動きを加える。
あるいは、偶数なら頭の上で捕り、奇数ならおへその前で捕るなど、動作を変える方法です。それでも機敏にできたら、眼と脳と身体のコーディネーションがすぐれている人です。
一見、日常生活と関係ないトレーニングと思うかもしれませんが、実は生活のさまざまな場面で応用できるトレーニングです。たとえば、運転中に突然、予期せぬ横断者が現れた、あるいは細い道路から車が飛び出してきた場合、ブレーキを踏むか進路変更で対処できるか。
時には加速するほうが危険回避になる場合もあります。いずれを選択するか、一瞬の判断です。
しかも、判断を即座に行動に結びつけねばなりません。こうした重要な行為を、私たちはいわば「練習なしのぶっつけ本番」でやっているのです。
「若いから反射神経がいい」「歳をとったから最近は反射神経が鈍った」等々、年齢のせいだけにしてすむ問題ではありません。たとえ歳をとっても、ふだんからこのようなトレーニングを重ねておけば、危険回避の対応にも余裕が生まれます。
お店の人の巧みなセールスに押されてつい余計な買い物をしてしまう、そんな失敗もこれらの訓練で回避されます。巧みなセールスというのは、いわば心の隙をついてくる、思わず買ってしまう方向に背中を押してしまうものですが、あなたが冷静な判断をし、行動を的確に選択する能力を身につけていれば、隙をつかれる心配も少なくなるでしょう。
スポーツでも、共通する局面は多々あります。たとえば野球の守備。
一死走者一塁で、内野手が自分の前に転がってきた平凡なゴロをファンブルするケースは珍しくありません。外の眼でボールを見るより、内の眼で次の動作を考えるほうに見るバランスが傾いたときに起こりがちなミスです。
内の眼で何かを強く意識すると、見ているはずの外の眼がおろそかになって、「見ているのに見ていない」状況が起こる典型的な一例です。トレーニングなどで瞬時に判断し、行動に移すスピードを高めておけば、内の眼と外の眼の切り替えが速くスムーズにできるようになります。
さらに応用するなら、実際にノックを受ける際、後ろから誰かに計算問題を出してもらい、答えが偶数なら2塁へ送球、奇数なら1塁に送球するなどの練習も効果的です。外の眼できちんと見る習慣をつける方法として、それぞれに異なる数字を書いた複数のボールを使う方法があります。
それを軽く投げ合い、まずは数字を読むことからはじめます。できるようになったら、守備でこれを使い、同様に偶数なら2塁送球、奇数なら1塁送球といった練習をします。
ボールをよく見る必要が生じますから、内の眼を使いながらも外の眼できちんと見る習慣がつけやすい練習です。守備だけでなく、バント練習やバッティング練習にも応用できます。
もちろん、野球だけでなくサッカーやバレーボール、あるいは日常生活でも応用してさまざまなバリエーションで活用できます。長さ3、4メートルの細い板を床の上に置き、その上を歩きながらパートナーに計算問題を出してもらいます。
足もとは見ずに、まっすぐ前を向いて行います。学校などでは平均台を使ってもよいでしょう。
その上を歩きながら、簡単な九九などの計算問題を出してもらうのです。2×3、4×5…反射的に答えの出せる計算なら大丈夫かもしれません。
が、やがてちょっと考える必要がある問題になると、たいていの人はふらついてしまいます。これは、内の眼の混乱が身体のバランスを崩すからです。
足もとを見ないで細い板の上を歩くとき、内の眼は足もとを見ています。そこに計算という、もうひとつ内の眼を動員する作業を求められて混乱するのです。
内の眼で足もとの確かさを保つ作業と、簡単な計算をする作業は、脳の中で同時に両立できます。うまく整理し、バランスを保てば、それほど難しいことではありません。
ただし、慣れや経験は必要です。突然それを求められたらとまどいます。
だからあらかじめ経験し、同じような「内の眼の重複作業」が求められる局面に備えておくのです。入学試験や入社試験にこれを採用するのも一案。
入学試験や入社試験の改革が叫ばれて久しいですが、相変わらず知識の詰め込みを必要とする受験システムが主流になっています。それで本当に能力が測れるのか?と疑問を抱えながら、これに代わる決定的な方法も考案されていないのが現状です。
私たちは、入試改革の一環として、ビジョントレーニングの発想を採り入れることを提案します。潜在的な能力を推し量り、性格や考え方まで推測できるからです。
優劣をつける目的には適さないかもしれませんが、とくに入社試験などには十分に活用できるはずです。一般教養や学歴、大学時代の成績、あるいは短期決戦型の面接などではたして期待どおりの人材を選考できるのでしょうか。
むしろ、ビジョントレーニングを実施したほうが、潜在的な性格や癖、何かに対応する反射や行動パターンが露わになります。国英数理社といった入試科目の1角に「視覚行動能力」といった項目があってもよさそうな気がします。
それによって、眼に対する人々の関心も大きく変わるでしょう。
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